2024/11/18 18:00
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▼大まかな潮州朱泥手拉壺の特徴について
・潮州朱泥手拉壺は轆轤引きで成形されるが故、薄い
薄いので予熱の熱がしっかり入り、茶葉を投入後に熱湯を注いでもボディの薄さが故、お湯の熱がボディに分散せず茶壺の中の熱湯をキープできる。
鳳凰単叢は如何にお湯の温度を下げずに高温を保てるかが、美味しいお茶をいれるポイントになるので潮州朱泥手拉壺は鳳凰単叢に適した茶器といえる。
・ボディは薄いけれどもちゃんと保温性もある
実際に一分以上蒸らすような茶葉であれば、ボディが厚い宜興紫砂壺のほうが保温性が高く美味しくお茶がはいるかもしれない。
しかし、鳳凰単叢のような長蒸らしをしない茶葉であれば、茶壺の中を短時間で一気に高温に保つ潮州朱泥手拉壺の方にアドバンテージが有る
・ボディが薄いので透気性が高い
宜興紫砂壺と比べると潮州朱泥手拉壺はボディが薄く通気性が高い、ボディの通気性が高いと茶湯が空気に触れ茶湯の”甘み”を敏感に感じやすくなる
・軽くて使いやすい
みなさんがふと手に取ってしまうマグカップを想像してみてください
なんとなく手に取ってしまうマグカップです、それって軽くないですか?
中にはそうではない方もいるかと思います。しかし茶器にとって軽さというのは使いやすさや扱いやすさに直結していると考えます。
・茶湯の温度を落とさずに、空気を取り入れやすい潮州朱泥手拉壺は鳳凰単叢、紅茶全般に合うと考えられます。
▼今回仕入れる潮州朱泥手拉壺の原材料ってどんな土?
基本的に現代の潮州朱泥手拉壺は宜興の朱泥も使うことがあるそうです、特に量産品は宜興から朱泥を買付け茶壺を制作している工房も多いそうです。
それでは、今回仕入れた潮州朱泥手拉壺の土は何処の原材料を使用しているかというと、100%潮州産
頼通発 大師曰く、探せば宜興にも頼通発 大師が求める土も有ることは有るのだが、できるだけ潮州の朱泥を使いたいそうで、頼通発 大師レベルになると30年モノの朱泥を使っているそうです。
そして最低でも10年は寝かせた潮州産の朱泥を、弟子たちに分けて使わせているとの事。
それから、議論を進めていくと頼通発 大師は焼成後のボディの通気性についてかなり拘(こだわ)りが有る事がわかった。
・通気性を犠牲にしたベンガラを混ぜた朱泥は絶対取り扱わない
・潮州朱泥手拉壺は美味しくお茶を飲む一つの”道具”にすぎない
・ベンガラを混ぜることで発色は良くなるが、そもそもお茶の美味しさを犠牲にしている
という具合に、かなりベンガラに対してかなりの拒絶反応があった
頼通発 大師曰く
”その作家がベンガラを使っているかどうか?そいつの手を見ればすぐわかるさ、ベンガラの土はその作家の手まで紅く染めるからな”
その他にも、工房の轆轤の周りをみたら直ぐに分かるそうで、ベンガラ配合の土を使うと轆轤台の周りは赤褐色に着色されている。とおっしゃっていました
私自身、沖縄県出身なので沖縄の民芸品の代表格である”やちむん”もベンガラを混ぜた作品が多く作られていることは承知しています。
やちむん作家さんの工房で豪快なベンガラ色に染まった轆轤台をよく見ていたので
頼通発 大師が仰っている ”ベンガラ土まみれの轆轤台”の様子は容易に想像がつきました
追記:大師はベンガラ自体の使用を全否定するのではなく”自身の作品と弟子の作品には使わせない”といったポリシーが有るだけで、他の茶壺作家が使う事は全く問題ないし、『むしろ鮮やかな朱色が出るから、それはそれで美しいし、それも茶壺の一つの在り方だ』とおっしゃってました。
▼潮州朱泥手拉壺の造形について
潮州朱泥手拉壺の造形美はある程度決まっています。
しかし、彼らも作家なので独自のニュアンスを入れている作品も多く見られました
そして造形について色々聞いてみて、特に勉強になった事をいくつか共有したいと思います。
▼”背の低いタイプ”の潮州朱泥手拉壺は香りに特化した”軽火〜中軽火”に仕上げた鳳凰単叢に向いている
”背が低いタイプ” は必然的に、底の部分の面積が広くなります。
面積が広くなると熱湯の中で茶葉が開きやすくなり香りに瞬発力が出てきます。よって香り高い軽〜軽中焙煎の鳳凰単叢をいれる際は背の低いタイプの茶壺を選ぶと良い
▼反対に背の高いタイプは足火の鳳凰単叢に向いている
理由は、背が高くなると必然的に茶壺の底辺部分の面積が狭くなり熱湯を注いだ際に茶葉が横方向に広がりにくくなります、よってゆっくりじっくり茶壺の中で抽出される茶葉に向いているので、鳳凰単叢で言えば中火〜足火の茶葉をいれる際に向いています。
▼茶壺の底は球体が良い
一般的に茶壺にお湯を注ぐ際のお湯の軌道の自由度と蓋碗にお湯を注ぐ際の自由度は蓋碗の方が自由度が高いと考えられます。
蓋碗の内側の壁にお湯を注いだり、お湯で蓋碗内の流れを作ったりと工夫次第で様々ないれ方が可能になります
詳しくは、台湾茶の妖怪 まうぞうさんのYoutube のアーカイブが非常に勉強になるのでもっと詳しく知りたい方は
↓をチェック
※みんな!まうぞうさんの知識は中国茶業界の財産なので、どんどんYoutubeで発信してもらうようにしましょう
同じく、潮州朱泥手拉壺で鳳凰単叢をいれる時も茶壺の中でお湯の流れを作ってあげたほうがより香り高い茶湯が抽出されるのでボディの底の部分は球体に近い方が良いと考えられています。
反対に、本体が円柱状や四角柱のように明らかに垂直に近い角がある形状では、本来の茶葉のポテンシャルが引き出せない可能性が出てくると考えられます。
▼お土産屋さんの量産品は後ろ手と注ぎ口は型を鋳込で成形し、頼通発 一門は手で造形する
他の作家さんの事は知らない。と頼通発 大師はおっしゃっていましたが、頼通発一門の教えは
後ろ手と注ぎ口は鋳込での制作は行わず、完全に手仕事で全体のバランスを見ながら制作するそうです
理由としては、ボディの大きさや形は同じモデルでも轆轤引きなので多少の誤差がある、鋳物で注ぎ口や持ち手の部分を制作してしまうとその誤差の部分を無理矢理修正しなければいけないので、バランスが悪くなりがち。
轆轤引きのボディに注ぎ口と持ち手を着けるのであれば、鋳物で注ぎ口と持ち手を制作するのではなく、手を使って形作る方が自然な仕上がりになる。とのことでした。
▼最後に頼通発 大師と紫砂壺と潮州朱泥手拉壺について議論した内容
頼通発 大師曰く、弟子には
『お金を稼ぎたければ宜興に行って紫砂壺を学べ、人々のお茶ライフに密着した”道具”を作りたければ潮州朱泥手拉壺を学べ』と最初に伝えているそうです。
つまり ”潮州朱泥手拉壺は民芸品で宜興紫砂壺は工芸品である” と
頼通発 大師は潮州朱泥手拉壺と宜興紫砂壺との間には ”くっきり線引” をしている事も解りました。
更に頼通発 大師を議論を進めていくと
・潮州朱泥手拉壺は美しさよりも、佇まいを重視する
・潮州朱泥手拉壺は見た目よりも、使う道具としての在り方を重要視する
・民芸品(潮州朱泥手拉壺)は百姓の手で生まれ、工芸品(宜興紫砂壺)は芸術家と職人の手で生まれる
・潮州朱泥手拉壺は美術館や飾り棚に飾るよりも、茶館でビシバシ使ったり、個人の毎日使うお茶道具として手に取りやすい場所に置いてほしい
といった、言葉がとても印象に残りました
その他にも
『模倣品や偽物が出回ることは喜ばしい事、それは世の中に認められた事だから』という言葉が特に私の心に残りました
※頼通発 大師の模倣品や贋作が中国のネットで販売されているとのこと。皆さまお気をつけくださいね。
追記
▼頼通発 大師の個人工房を訪れた際に、ズッコケたエピソードを一つご紹介しようと思います
『よし、お前と取引する記念にとっておきの鳳凰単叢を振る舞ってやろう』と
頼通発 大師が部屋の奥からコソコソと茶葉を取り出してきました。その茶葉はなんと
鳳凰単叢 鶏籠刊 母樹
『おおおお、こんな貴重な茶葉を頂いても良いのですか?』と興奮気味に茶葉をじっくり観察していると
頼通発 大師がコソッと、茶器BOXの中から潮州の白磁蓋碗を取り出し予熱しだします
・・・???
・・・えっ?白磁蓋碗使うの??
『せっかくなのであなたの潮州朱泥手拉壺を使いましょうよ』と私が言うと頼通発 大師は
二〜カっと笑い
私にウインクしながら『最高級の茶葉は白磁の蓋碗が一番よ』と二人で大笑いしました
でも本当は頼通発 大師の潮州朱泥手拉壺を使って鳳凰単叢 鶏籠刊 母樹を飲んでみたかったな〜