2025/09/02 04:38
今回販売する茶葉と直接の関係は無いのですが、美味しい武夷岩茶を楽しむヒントになってほしいという想いでこのブログを公開します

〜武夷山の水と、武夷岩茶を味わうということ〜
武夷山の水について、今日は少し長めに書こうと思います。
実はこれ、Xでクイックメモとして投稿するつもりだったのですが──
無駄に拡散して思わぬハレーションを起こすより、この場所で静かに綴る方が良いと考え直しました。
▼武夷山の水はどんな水?
「武夷山の水」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか?
武夷山の雄大な自然、切り立った岩肌を伝い落ちる清流……。
ミネラル豊富で、滋味深く、いかにもお茶に合いそうな水。
きっと多くの方が、そう想像するのではないでしょうか?
実際に私もそうでした。
しかし──実際に測定してみると、その先入観は覆されることになります。

※武夷山市内のお茶屋さんや天心村の製茶所でよく使われる武夷山が水源地の農夫山泉
▼店主の小さな趣味「TDS測定」
最近の私の趣味は、出張先やお店で使う水の「TDS値」を測ることです。
TDSとは「総溶解固形物」のこと。
つまり、水にどれくらいのミネラルなどが溶け込んでいるかを示す数値です。
高い値 → ミネラル豊富
低い値 → より純水に近い
参考までに、沖縄の店舗で使う水道水は およそ100 mg/L。
日本では比較的高い部類で、私は子どもの頃からその水に慣れ親しんできました。
だからこそ、初めて内地の水を飲んだとき「喉に引っかからない……なんだか落ち着かない」と感じたことを、今もよく覚えています。

※潮州市内にある鳳凰単叢の焙煎所の水道水(濾過済み)
▼武夷山で測ってみたTDS値
実際に武夷山で測定した数値をいくつか挙げてみます。
天心村製茶所の水道水 …… 10〜15 mg/L
武夷山市内ホテルの水道水 …… 9〜37 mg/L
慧苑寺近くの小川 …… 17〜19 mg/L
農夫山泉(武夷山水源) …… 7 mg/L
そして、ネットの公開情報によれば:
九曲渓(景勝地の川) …… 25.3 mg/L
麻陽渓・雷公口水庫 …… 14〜24 mg/L

※武夷山市内のホテルに備え付けのミネラルウォーター
▼気づいたこと
どうでしょう?
驚きません?
武夷山の水は、想像以上にミネラルが少ないのです。
私は勝手に「岩肌を流れた水だからミネラル豊富に違いない」と思い込んでいました(赤面)
でも実際はその逆。
刷り込みやステレオタイプに囚われていた自分に、少し呆れてしてしまいました。
▼武夷岩茶と水の関係
重要なのはここからです。
現地のお茶屋さんは、こうした「ミネラルの少ない水」で武夷岩茶をいれていると考えられます・・・・
職人さんたちも、その水を基準に茶葉を仕上げているとなると・・・
つまり──武夷山の風景や空気ごと再現したいなら、TDS値の低い水で淹れるのが近道だと考えられます。
もちろん「日本の水で淹れたら思いがけず美味しかった!」という偶然の出会いも素敵です。
でも、やはり「つくり手が美味しいと感じた状態」で味わうことには、特別な価値があると考えます

※2025年春茶の品評をする武夷岩茶の製茶師
▼店主のおすすめ
私自身、多くのお茶を飲み比べてきましたが、武夷岩茶は水質に左右されにくい「タフなお茶」でもあります。
だからこそ、基準を知ったうえで味わうと、そのタフさや奥深さに気づけるのです。
ぜひ一度、TDS値の低い水を用意して、武夷岩茶をいれてみてください。
現地を訪れた方には懐かしい景色が、まだ訪れたことのない方には想像の中の武夷山が、より鮮明に立ち上がってくるはずです。
武夷山で生まれたお茶を、武夷山の水のことを思いながら──。
どうぞ、ゆっくりと味わっていただけたら嬉しいです。

※沖縄の茶樓雨香 本店で使用している水