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2024/07/09 17:12

※写真は、福建省泉州市内の茶樓にて

安渓鉄観音で中国茶の扉が開いた方は多いと思います。

何を隠そう私もその一人です。

時は遡ること23年前、私は北京で暮らしていました。

先ず、中国に初めて訪れる日本人が遭遇する洗礼。

スーパーやコンビニでペットボトルの烏龍茶買い“ゴクゴク飲もう”とお茶を口に含んだ瞬間、お茶自体に砂糖が入っている事に気がつき盛大に吹き出します。

正に不意打ち!!!

そして、次は間違わないようにと”無糖”とラベルに書いている烏龍茶を必死に探すことになる。

そんなこんなで、中国のお茶に良い印象がないまま少しの時間が経ち、友人と一緒に北京の中国茶専門店を訪れます。

そこで試飲したのが、茉莉花茶と安渓鉄観音。

茉莉花茶は後日書くとして、その時に飲んだ安渓鉄観音は衝撃的でした

『え?色が茶色じゃない、なんで?』

一口啜ると、口の中に広がる鮮やかな花香、何杯も飲み進めていくと香りが身体内に蓄積されていくような感覚。

”人生でお茶で感動することなんてあるわけ無い”と決めつけていた私はここでも不意打ちされたような衝撃を受けるのです。

それから様々な中国茶を楽しむようになり、中国茶の感動をその都度体験するのですが

やっぱり一番最初の体験はより深く記憶に刻まれています。


▼秋の安渓鉄観音なのか?それとも春の安渓鉄観音か?

これは議論が生まれる余地があると考えています。

私は正直申し上げて、春茶のほうが好み。しかし、安渓の茶農家さん曰く

『安渓鉄観音はやっぱり秋茶よ、秋茶の香りが安渓鉄観音の醍醐味』と何度も力説するので

日本の他の中国茶専門店で安渓鉄観音の春茶の取り扱いもあるし春の安渓鉄観音の仕入れは見送ろうかな・・・と考えていた矢先

出張で福建省を訪れるタイミングが!

ついでに安渓鉄観音の春茶の状況をリサーチを兼ねて茶農家さんを訪ねてみます。


▼残念ながら春茶の販売シーズンは既に終わりの時期で良い春茶は残っていないのだろうな〜。と思いながらいくつか試飲します。

出迎えてくれたのは先祖代々茶農家で笑顔が素敵な何さん。

何さんは流石仕事をしている男の手!!といった感じのゴツくて頼りがいがある拳。

そのゴツい手でゴソゴソ茶袋から直接茶葉を取り出して蓋碗に放り投げます。

そして、試飲スタート。

やっぱり、春茶特有のモワッとした(※筆者、小学校の国語の成績1)口の中に広がるふくよかさはあまり感じられず・・・。

買わないのに何種類も試すのは悪いなと思い、営業スマイルをしながら三煎だけ頂いて席を立つと


『ちょっとまったーーーーー!!!』と何さんのご婦人が登場、そしてシンプルにこう問われます


『あんた、いくらまで出せるんだい?』


外は大雨。こうなったら、ここからが本番です。

私の出した条件は以下の三つ

・シングルオリジンであること
・今年の春茶であること
・秋茶に負けない香りがすること

わかった。と一言私に伝え、御婦人が旦那さまに ”◯※□◎〜!!(方言で聞き取れない)”と指示を出します。

そして持ってきたのが冷凍庫でカチコチ&真空状態で見るからに大事に保存してある茶葉。



▼どうして、それを早く出さない。。。

使い込まれた天秤で7gきっちり量って、一煎目を啜ります。

頭のなかで 『さっきと全然違う。早くこれを出してちょうだいよ』と安堵の言葉がよぎります。

ご婦人曰く

『ここ15年くらいは高品質の清香鉄観音を買ってくれる外国人バイヤーはほぼいなくなった』

『上海や広州の茶城や中国茶都などの市場に茶葉を卸しているが、そこから海外へ渡っている茶葉も稀にある』

『国内の需要も激冷えで、安渓鉄観音の製法など農家側(生産者側)が変わらなければいけない』

と何度も言っていました。

合計6種類の茶葉を試飲したところで、ある傾向を改めて再確認します。

”樹齢が5年以下の新叢は鮮やかな香りで、反対に老叢から摘まれた茶葉は優しく香る、言い換えれば地味”


▼新叢は最低でも植えてから2年は茶葉の収穫ができない、農家さんにとっては未来への投資とも言えるが、この2年間は収入の減少を意味する

ある程度、資本力のある茶農家さんであれば2年間の収入源は問題ないのかもしれない。

しかしこの何さんのご家族は一見、武夷山の農家さんとは違い経済的に裕福そうには見えなかった。

新しい取り組みとして、5年前から鉄観音の新叢を植え始めているそうで新叢の茶葉はやはり動きが良いらしい

茶農園の一部を除いて段階的に新叢の鉄観音へ植え替える計画をしているそうです。

人気が無くなり、売上が落ちる、売上が落ちると未来への投資ができない。という悪循環を断ち切る思いでチャレンジしているのでしょう。

こんな農家さんは積極的に応援したい!!! しかし・・・しかし・・・